クーリヤッタムはインドを代表する古典演劇です。2001年にユネスコの世界無形文化伝承のリストに登録、2008年に正式にユネスコ世界無形文化遺産に制定されました。
インド南西部に位置するケーララ州で、ヒンドゥー寺院のために働くコミュミティの特定の家系の人々によって、代々伝承されてきたものです。千年以上の伝統を持ち、現存する世界最古のサンスクリット演劇です。(注1)
サンスクリット語の戯曲を基にして上演されることが大きな特徴であり、役者はそれぞれの場面の状況に合った節回しにのせて、台詞や詩を詠います。(注2)
さらにクーリヤッタムの演技の特徴といえるのが、ハンドジェスチャーを使って、言葉を手話のように丁寧に表わすこと、そして、目と顔の表情を駆使した細やかな感情表現です。
男性役は男性が、女性役は女性が演じます。
確固とした様式性を持った演劇で、限られた狭い舞台の中で演じられ、舞台装置はほとんど使わず、人間のイマジネーションを最大限に活かすような知恵に満ちた演劇です。
化粧や着付けを行う楽屋では、まずオイルランプが灯される。役者はランプの火に見守られる中で,祈りとともに赤い紐を頭に巻き、化粧を始める。
化粧の色やデザインは、役の性質によって決まっている。
男役では、例えば緑色はヒーロー、赤色は荒々しく激しやすい性質を表す。眼の下には太く黒いラインを描き、眼の表情を強調する。また、顎のラインに沿って紙を起ててはり、顔の表情をより強調するデザインも特徴的。
女役とナンギャールクートゥのメイクは同じで、一種類。少し橙色がかったクリーム色の地に眼のラインをはっきりと描く。
メイクに使う色は顔料や藍、オイルを燃やして得る煤など天然の物を使っている。また眼の中にチュンダ(chunda)とよばれる花の雌しべの基の部分を入れて白目を赤く染める。
ミラーヴ(Mizhavu):銅製の壷に皮を張った太鼓。クーリヤッタム、ナンギャールクートゥ、チャーキヤールクートゥのための伴奏楽器である。素手で上から叩きおろすようにダイナミックに演奏する。壷型の胴からうまれる倍音豊かな響きは、他に類を見ない。通常2台で演奏し、1台が拍子を保ち、もう1台が演技に合わせて即興的に演奏し、劇を盛り上げる。
イダッキャ(Edakkya):もともとは寺院で神に捧げる歌の伴奏として使われる楽器で、聖なる楽器と称されている。日本の鼓に似た形状だが、肩からつるして右手に持った一本のばちで叩くスタイルである。皮を締めている紐と肩から吊っている紐が繋がっていて、胴を上から押さえると音程が上がる。旋律を演奏することのできる数少ない打楽器のひとつ。
ターラム(Thalam):小型のシンバル。色々な大きさのものがあるが、クーリヤッタムで使われるのは、小さなタイプである。拍子を刻む役割。
シャンク(Sanku):ほら貝。劇の始まりや神々の登場する場面で使われる。